研究内容

東洋的心身論

東洋的心身論とは

現代の私たちは、西洋的な科学技術の世界、つまり物事を二つに分けて分析していく思考の世界に生きています。実際、西洋の歴史のなかでは、人間の「心と身体」も別々に分けて考えることが主流でした。


それに対して東洋の伝統では、修行や稽古、坐禅や瞑想などの心身の実践を通して、日常的な分析の世界 (ステージ2) から、物事が二つに分かれる以前の直感の世界 (ステージ1) に一度立ち戻ろうとします。この状態は、たとえば生まれたばかりの赤ちゃんの感覚世界のような、素朴で純粋な経験の世界です。


そしてそこから、もう一度分析的な世界との再統合を図り (ステージ3)、最終的には主観と客観、思考と行為の間に何の区別もない、高度な直観の世界 (ステージ4) に至ることを目指します。このような世界では、心と身体は「心身一如」と呼ばれる一体で分けることのできない状態になり、「無敵」「弓禅一如」「誠の花」のようにいわれる名人芸のパフォーマンスや、「悟り」「解脱」「慈悲」のように表現される修行の到達点が実現されます。


このように、実践を通して、二つの物事の区別がない理想的な境地に至ることが、東洋的な世界観、心身観の本質であるといえます。

このような東洋的な世界観、人間観の本質は、参禅修行も行った哲学者の西田幾多郎 (1870~1945) の『善の研究』、西洋世界に禅の文化を伝えた鈴木大拙 (1870~1966) の『日本的霊性』『東洋的な見方』、東洋哲学者の湯浅泰雄 (1925~2005) の『身体論』、井筒俊彦 (1914~1993) の『意識と本質』など、近現代の日本の哲学者による著作のなかでも、何度も繰り返し語られています。